臼杵まなび旅

器と料理。それぞれの方法で
臼杵の魅力を表現

ウサミヒロユキさんの紹介画像

宇佐美 裕之

ウサミ ヒロユキ

『USUKIYAKI研究所』代表
大阪芸術大学工芸学科で陶芸を学ぶ。卒業後、伝統工芸士のもとで陶芸を修行の後、家業を継ぐために帰郷。臼杵焼に出会い2015年に仲間と「臼杵焼復活プロジェクト」を立ち上げる。

石仏観光センター・郷膳うさ味

国宝・臼杵石仏の入り口にある『石仏観光センター・郷膳うさ味』は、観光客が食事や土産を求めて立ち寄る名物店。宇佐美裕之さんはこの店の主だが、じつはもう一つの顔がある。彼は約200年前に臼杵藩で作られた幻の焼物・臼杵焼(末広焼)を現代に蘇らせた、気鋭の陶芸家でもあるのだ。

臼杵に高速道路が開通した2001年頃は24万人が石仏観光に訪れたが、そのにぎわいも年を追うごとに失われていった。「お客さんをただ待つだけでなく、自分からも何か発信していかないと」。そんなことを考えていた宇佐美さんはある日、寺で古い臼杵焼に出会う。その白磁輪花はシンプルで美しく、藩全体で質素倹約に努めていた臼杵らしい器だった。「これを基に新しい臼杵焼を作ろう」と、仲間を集めてプロジェクトを立ち上げた。そもそも臼杵焼は制作期間が数年と短く、資料もほとんど残っていない。「だから忠実な再現ではなく、現代の暮らしに合わせた器にしました」と宇佐美さん。盛り付ける料理を選ばない凛とした美しさが評判となり、最近ではインスタグラムを窓口にして遠方からも数多くの注文が届くという。「制作が追いつかないくらい忙しいのですが、だからといってやたらと規模を拡大するのは本来の趣旨とは違うと思うんです。これからも仲間と協力しながら、この町で良い器を作り続けていきたいです」と笑顔をこぼした。

器は料理の額縁。そう考える宇佐美さんの最大の理解者が妻の友香さんだ。野菜ソムリエやフードコーディネーターなどの資格を持つ友香さんが作るのは、臼杵の「ほんまもん野菜」をふんだんに使った、野菜が主役の手作り料理。彩り豊かで滋味にあふれた味わいは、弁当やケータリングとして多くの人のもとへ届けられ、おいしさの輪を広げている。「私が厳格な玄米菜食の家で育ったことも大きいのですが、やはり”身体は食べたもので出来ている”という医食同源の信念が料理作りの根本です。ですから『ほんまもん野菜』作りが盛んな今の臼杵の状況は、本当にありがたいですね」。嫁いできた20年前は、臼杵でも有機野菜を手に入れるのは難しかったという。そんな現実と抗いながら知り合いに無農薬野菜を分けてもらい、夏には野菜だけの「蓮料理」を作るなど、自分の信じることを地道に続けてきた。気がつけば周りに理解者も増えて、有機野菜も盛んに栽培されている。いつの間にか臼杵は、彼女にとってかけがえのない故郷となっていた。そんな友香さんの料理が一番映えるのは、やはりご主人が作った臼杵焼だろう。夫婦二人で作りあげた器と味わい。まさに器は料理の額縁なのだ。

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