臼杵まなび旅

小さな蔵の新支配人
酒造りの真髄に触れる

實崎 貴文

ジツザキ タカフミ

『小手川酒造株式会社』支配人
『フンドーキン醤油株式会社』に19年勤務し、別府市や大分市での営業を担当。2023年1月より『小手川酒造株式会社』の支配人に。

小手川酒造株式会社

作家・野上弥生子の生家としても知られる『小手川酒造』。安政2(1855)年の創業時から一貫して、手仕事による酒造りを守り続けている。2023年の年頭、この老舗蔵元に新しい支配人として實﨑貴文さんが赴任してきた。前職はフンドーキン醤油の営業だが、その前の会社では酒類の販売を担当していたという。「19年ぶりに酒の世界にUターンですよ」と、新支配人は嬉しそうに微笑んだ。1月は酒造りが大詰めの時期で、赴任したばかりの實﨑さんも仕事を手伝った。小さな蔵で仕込む昔ながらの酒は、気温など自然の力が大きく作用する。「そこで見た酒造りの繊細さに驚きました」。蔵に息づく伝統と、職人の技。それらに初めて触れたことで、實﨑さんは酒造りの奥深さにたちまち魅了されたようだ。

 蔵の規模としては、決して大きくはない。多銘柄・大量の酒を仕込めない代わりに、味にメリハリをつけることで幅広いニーズに対応しているという。「吟醸酒は辛口、大吟醸は少し甘口ですね。以前は淡麗辛口の酒が主流でしたが、最近は飲みやすい甘めの味も好まれているようです」と、時代の変化を読みながらの酒造りを目指すが「同じ銘柄の酒でも毎年、味が微妙に違う。そこが難しいところなんですよ」と苦笑い。だが、その顔はどこか楽しそうだ。売る楽しみから、造る楽しみへ。新支配人のもとで、老舗蔵元の新しい酒造りが始まる。

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